ぷらイムによる演奏映像　http://youtu.be/Qo5FVUATtgo

 

こちら、プルーストの著作『失われた時を求めて』　１９世紀から２０世紀初頭に書かれました長い自伝的小説です。これは、日本で初めて出た全訳の１巻目。 この小説の中で一番有名なのが、マドレーヌの逸話です。語り手が、ある寒い冬の日に、熱い紅茶にマドレーヌをちょっと浸して食べる。その時、得も言われぬ喜びが心の奥底からわき上がってくる。それが、かつてコンブレという場所で口にしたマドレ−ヌの味である、と分かった時に、コンブレの、その時代、その場所の思い出が、トータルな全体的な記憶として目の前に現れる。知性による記憶ではなく感覚によって呼び起こされた、忘れていた記憶、それを無意志的記憶と呼び、この記憶こそが過去の真実を再現するものだと、それが、この本の大きなテーマとなっています。 普通の人でもよくあると思います。「あ、これ知ってる。。。なんだっけ、なんだっけ」みたいな感覚。そんな、記憶の底から浮かび上がってこようとする過去の真実の物語を、曲にしました。１３分位の長い曲です。曲としては訳わからないかもしれませんが、少しでも、プルースト的世界を楽しんでいただければ、と思います。

 

（淀野隆三・井上究一郎訳より）

長い間、私は宵寝になれてきた。ろうそくを消すとすぐ目はふさがり、「眠るんだな」と思うまもないことがときおりある。それでいて、半時間もすると、もう眠らなければならない時間だと、ふと考えて目がさめる。まだ手に持った気でいる本をおき、明かりを吹き消そうとする。さっきまで読んでいた本の回想は、ついとろっとした間も、とぎれていたのではなく、ただちょっと変なぐあいになっているのだ。
 
 
 

	窓の外 早起きの小鳥の声   まだ明け切らぬ夜の うすぼんやりとした木々の緑   露の重みにしなった草 霧の中を 白い光の帯　     回想の螺旋を 落ちていく 回想の螺旋を落ちていく     コスモス 　　　ピンク 　　　　　　　濃いピンク 　　　もっと濃いピンク 花びらが風にふるえる     白いブラウス その人は帽子を押さえ 落葉の道を歩く 青い空にはきっと 白いうろこ雲 いわし雲　 むくむくした雲に 戯れる鳥の姿     走ってくるのは 誰だろう 走ってくるのは誰だろう         曖昧な印象を とらえようとして 沈んだ追憶に身を傾ける 浮かんで消える おぼろげな名前は 焦点がぼけたまま 指の間をすりぬける     一 瞬 と 永 遠 の は ざ ま     消えて行く