ぷらイムによる演奏映像　http://youtu.be/cR83fhNJwmU?t=1m20s

 

Ｙ	「第一部最後の曲、グリーンスリーブス。これは１６世紀後半のエリザベス朝時代から広く歌われている、イングランドの古いフォークソングです。1580年に英国書籍出版商組合の機関誌に「新しい北方の小唄」として記録されています。なので成立は大体その頃かなぁと思います。」
Ｍ	「日本で言うと関ヶ原の頃になりますね。」
Ｙ	「この曲がはやった時代に活躍していたのがシェイクスピアです。シェイクスピアのお芝居の中にも実はグリーンスリーブスという言葉が登場するんです。」
Ｍ	「その位はやっていた曲という事です。詳しくはプログラムノートに書いておきました。美しい旋律ですし、知ってる方、お好きな方、多いと思います。」
Ｙ	「歌詞もさまざま伝わっておりまして、これは、いわゆる替え歌が沢山あった、という事らしいんです。今回はぷらイムバージョンとして、また新しいグリーンスリーブスを作ってみました。 どういう物語かと言いますと、最初の場面は夜です。年老いた男が一日を終えて眠りにつこうとしている。でも、その日は、なかなか寝付けないんです。

	いつまでも寝付かれない　夜のしじまの奥底から もう捨て去ったとばかり思っていた 彼女の面影が浮かび上がってくる。 閉じるのを忘れ　開いたままになっている物語の様に。 わたしは彼女を　その名前でしか呼んだ事がない。 。。。グリーンスリーブス。 最初は　ささいな事だった。 言葉を交わすでもなく ただすれ違っただけの　彼女の髪からは 樹々の吐息と　暖かな日だまりのにおいがした。 人で賑わう市場に。 日曜毎の礼拝に。 わたしは彼女の姿を目で追う様になった　 やがて　果実は収穫の時期を迎え 小鳥達は　二人のために祝福の歌を歌った。 野に咲く花は　あなたの為に ゆらぐこもれびは　あなたの為に 銀の尾花も　あなたの為に 過ぎゆく雲も あなたの為に 麦わら帽子に　緑の小袖 わたしの大切な　グリーンスリーブス     目が覚めれば　彼女はいない あれから　幾年もの年が流れ過ぎたのに わたしの見る夢は　変わらない   グリーンスリーブス

最初は、猥雑で俗っぽい歌、という位置付けだった！？

シェイクスピアよりはちょっと前に成立したと考えられ、シェイクスピア当時一種のはやり歌だったグリーンスリーブス。

『ウィンザーの陽気な女房たち』に、グリーンスリーブスが登場します。

	"But they do no more adhere and keep place together than the Hundredth Psalm to the tune of 'Greensleeves'."（第二幕第一場より） My doe with the black scut! Let the sky rain potatoes. Let it thunder to the tune of 'Greensleeves', hail kissing-comfits, and snow eringoes. Let there come a tempest of provocation, I will shelter me here."（第五幕第五場より）

いずれも、低俗、という事を表現するのに、グリーンスリーブスという言葉を持ち出しています。

今は「グリーンスリーブス」という曲に、低俗な歌というイメージはありませんので、小田島雄志訳では、意訳されてしまって、グリーンスリーブスという言葉がシェイクスピアに出てくる事にも気づきません。翻訳ではどうなっているのか、機会があったら探してみてください。

今日、お聞きいただくグリーンスリーブスは、若き日の甘酸っぱい恋の思い出を懐かしむ男の物語です。